N銘柄ポートフォリオ:線から面へ(現代ポートフォリオ理論の基礎)


以前、2銘柄ポートフォリオによってなぜリスクが下がるか説明しました。

1銘柄の場合、選択できるリスク・リターンの組み合わせはとなります(A社だけ、もしくはB社だけ)。2名柄の場合、選択できるリスク・リターンの組み合わせは線に拡大されます。A社、B社の組み入れ比率を変えることで、下記曲線状のリスク・リターンを自由に選択するすることができるようになります。



では、銘柄数をさらに増やしていくとどうなるのか。これが今日のテーマです。

3銘柄ポートフォリオ

銘柄を3つに増やしたときのリスク・リターンの関係はどうなるのか。組み入れ比率を変化させたときのシミュレーション結果は下記のようになります。(3銘柄ポートフォリオのリスクとリターンの式は書くのがめんどうなので割愛しますw平均と分散の定義から導けます。)

それぞれのリターン・リスク、相関係数は下記としました。

リターンリスク
A社12%18%
B社7%14%
C社3%12%
相関係数
AとB-0.4
AとC-0.8
BとC-0.2

3銘柄になると変数が多くなるので、例えばA:B = 50 : 50のポートフォリオを一つの銘柄と考えて、Cとこの銘柄の2銘柄ポートフォリオの曲線を描く、ということをしています。

それぞれの曲線がどの2銘柄の曲線かを示したのが下記です。6パターンの組み合わせで曲線を描いてます。



A:Bの比率をもっと細かく変えていけば、次第に内側が塗りつぶされた面になるでしょう。つまり、3銘柄ポートフォリオでは、面上の点からリスク・リターンを自由に選択できるようになります。




N銘柄ポートフォリオ



さらに銘柄数を増やしていくと、3銘柄のときよりも選択できる面の大きさが広がっていきます。そして、その中に全ての銘柄が含まれることになります。


したがって、ポートフォリオの銘柄数を増やしていけば、様々なリターン・リスクの組み合わせを実現することができるのです。

さて、このように銘柄数を増やせば選択肢を増やせるのですが、どの組み合わせが最も良いのでしょうか。

これはまた別の機会に。

ポートフォリオ効果によってリスクを下げることの理論的説明




私はリスクが嫌いです。

横断歩道を渡るときに、信号無視して突っ込んでくる車がいないか何度も確認するほどビビりです。あと、道を歩いているときに背後に人がいるのも嫌ですね。このご時世いきなり刺される可能性もなきにしもあらずなわけですし。


一般的にもリスクは小さい方が好まれるでしょう。ただし、株式において個別の銘柄のリスクとリターンはトレードオフの関係で、ハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターンなのです。なので、リスクを小さくしようとすれば、リターンも小さくなってしまう。


悩ましい問題ですね。


これを解決してくれるのがポートフォリオ効果です。ポートフォリオとは複数の銘柄を保有するだけのことですが、これにによって、下記のようなリターン、リスクの組み合わせが実現できるようになります。

図1

ポートフォリオ効果の理論的説明

なぜこのようなことが可能か、ガチガチの理論面から説明したいと思います。

X株とY株の二つの株式からなるポートフォリオを考えます。
X株の保有割をaとし、このポートフォリオをZとすると、

$$Z = aX + (1-a)Y $$

ポートフォリオの平均\(\mu_{Z} \)と分散\(\sigma_{Z}^2 \)は、相関係数をrとして

$$ \begin{eqnarray}
\mu_{Z} &=& a\mu_{X} + (1-a)\mu_{Y} \\ \\
\sigma_{Z}^2 &=& \frac{1}{n} \sum (Z-\mu_{Z})^2 \\
&=& \frac{1}{n} \sum (aX+(1-a)Y – (a\mu_{X}+(1-a)\mu_{Y}))^2 \\
&=& …\\
&=& a^2\sigma_{X}^2 + (1-a)^2\sigma_{Y}^2 + 2a(1-a)r\sigma_{X} \sigma_{Y}\\

\end{eqnarray}$$

途中かなり端折ってしまいましたが(数式入力けっこうしんどい、、、)、このように平均と分散はaの媒介変数表示で表すことができます。

ここで平均(\(\mu_{Z} \))はリターン、分散の平方根、つまり標準偏差(\(\sigma_{Z} \))はリスクを意味してます。

なので、この2式からリターン・リスクの関係が分かるということですね。

リターンはX,Yの単純な加重平均ですが、リスクは何やら複雑な式になってます。。
増減表を書けばリターン-リスクのグラフの全体像が分かりますが、めんどくさいのでそこまでは書きません。一応自分ではやってみました(暇人w)

数式のシミュレーション

増減表は書きませんが、エクセルでシミュレーションを行なってみたので、その結果を載せたいと思います。条件として、下記のように設定し、Xの保有割合aと相関係数rを変えたときのリターン・リスクの関係を見てみます。

  • X株:リターン 7%, リスク 20%
  • Y株:リターン 2%, リスク 11%

点AはX株のみ保有している状態(つまりa: 100%)、そこからaを変化させて点B(Y株のみ保有)に至るまでの軌跡を示してます。色は相関係数rの違いを表してます。

これらの軌跡は左側に膨らんでいる、つまりリスクが低減されていることが分かります。
このときポイントは三つあって、

  1. リターンはX,Yの加重平均である
  2. リスクはX,Yの加重平均よりも小さくなる
  3. リスク低減は相関係数が小さいほど効果が強い


1,2はリスクのみが低減されることを意味していて、「ローリスク・ローリターン」の原則を覆したことになります。たしかに点Bから出発すると、リスクは下がっているにもかかわらずリターンは上がっていることが分かります!図1に示した部分を実現できていますね。

3については、逆の値動きをする2銘柄を組み合わせた方がリスク低減効果が大きいことを示してます。たしかに相関係数-0.8の場合が最も左に膨れています。逆に、相関係数が0.8の場合を見れば分かる通り、1に近いほど効果は薄れます。まあ直感的にもそうですよね。逆の値動きをするもの同士は相殺してリスクは小さくなる。それが理論的にも示されたということです。

まとめ

ということで、ポートフォリオ効果によってなぜリスクが低減するのか理論的に説明してみました。

ここで気になるのが、リスク・リターン曲線上のどの点を買うのがいいのか?ということです。
たしかに、X, Yを組み合わせればリスクを低減できますが、リターンが最も高いのはXのみ保有した場合です。ハイリスク・ハイリターンを好む人はXのみを保有するでしょう。

最適なポートフォリオは何か?これはとても興味深い問題です。

また別のときに書きたいと思います。

では。

相関係数って何者?: 共分散のスケーリング



相関係数の性質を理解していても、その本質を理解している人は意外と少ないんじゃないでしょうか。
*かくいう私も最近まで理解してませんでした。

相関係数の性質


相関係数は2種類のデータの関連性を示すものです。
-1~1の値を取り、下記のような性質を持つことが知られてます。

  • 相関係数が1に近い:同傾向が強い
  • 相関係数が-1に近い:反対傾向が強い
  • 相関係数が0に近い:(直線的な)関連がない

この辺りは知ってる人も多いと思います。

今回考えたいのは、よく知られた性質の話ではなく、一体どこからこのようなものが出てきたのかということです。

相関係数とは何者


まず相関係数の定義を見てみます。2種類のデータ列X, Yがあったとき、

$$ 相関係数= \frac{共分散}{Xの標準偏差\times Yの標準偏差}$$

共分散をX, Yの標準偏差の積で割ったものですね。なぜこのような式になるのか。前回の記事で書いたように、共分散は二つのデータ列の傾向を示してます。

しかし、共分散の値の大きさから傾向の程度を判断する基準がありません。例えば共分散が100だから同傾向の度合いが大きいとか、30だから小さいとか言えないわけです。なぜかというと、傾向の程度はX,Yの分散との比で決まる相対的なものだからです。

これは共分散の役割から考えると分かります。

合計(X+Y)の分散 = Xの分散+Yの分散+共分散

上式のように共分散はX、Yの傾向から合計の分散の値を調整するものです。
分散はXとYの単純な足しあわせにならず、共分散項による調整を受けるということです。

なので、例えば下記二つの例では同じ共分散100でも意味が異なるわけです。

  • Xの分散, Yの分散 = 110, 130のときの共分散100
  • Xの分散, Yの分散 = 1000, 800のときの共分散100

当然前者の方が合計の分散に与える影響が大きいため、前者の場合の方が同傾向の度合いは大きいと考えられます。

絶対的な判断基準を作る

「共分散の傾向の程度はX,Yの分散との比で決まる相対的なもの」です。

じゃあ、共分散をX, Yの分散で割ってあげれば絶対的な判断基準ができますよね。実際には分散ではなく、分散の平方根、つまり標準偏差で割ります。なので、下記の定義になるわけですね。

$$ 相関係数= \frac{共分散}{Xの標準偏差\times Yの標準偏差}$$

そして、この式の右辺は必ず-1 ~ 1となります。
この証明はググればいろいろ出てくるので割愛します。

まとめ

はい、ということで、共分散のままでは傾向の度合いに対する判断基準がないので、

標準偏差で割ることで絶対的な判断基準を作ったと、

そしてそれが相関係数と名付けられたということですね。

では。

共分散の本質を定義から考える

共分散ってややこしいですよね。

ネットで調べても定義が出てくるだけで、そもそもどこからこのような考え方が出てきたのかよくわからん、、、と私は思ってました。

一応高校でも習ってるみたいなんですけどね。

全く覚えてませんw

ただ、投資でもよく使用する相関係数は共分散を-1~1までの値にスケール変換したものですし、現代ポートフォリオ理論にも関係してくる話なので、共分散を理解することって実は大事なことなんじゃないかなーと思ってます。

共分散の前にまず分散について

分散(\( \sigma^2 \))は平均からのばらつき具合ですね。平均との差の二乗の平均で定義されます。

$$\sigma^2 = \frac{1}{n} \sum (x-\mu)^2 $$

例えば、企業Xの株価が下記だった場合、計算は割愛しますが、分散は125となります。

4月5月6月7月
株価1001109080

企業Yの株価が下記だった場合、分散は725となります。

4月5月6月7月
株価230200180250

共分散とは

今回考えたいのは二つのデータを足し合わせたときに、分散はどのようになるかです。

4月5月6月7月
株価X1001109080
株価Y230200180250
合計330310270330

つまり合計の分散ですね。計算すると分散は600になります。
ただ、ここで知りたいのは分散の値そのものではなく、合計の分散とX, Yそれぞれの分散の関係性です。
単純な足し合わせではなさそうです。

分散の定義から、

$$ \begin {eqnarray} \sigma_{X+Y} ^2 &=& \frac{1}{n} \sum (X+Y-\mu_{X+Y})^2 \\
&=& \frac{1}{n} \sum (X+Y-(\mu_{X}+\mu_{Y})^2) \\
&=&\frac{1}{n} \sum (X-\mu_{X})^2 + \frac{1}{n} \sum (Y-\mu_{Y})^2 + 2\times \frac{1}{n} \sum (X -\mu_{X})(Y – \mu_{Y})\\
&=&\sigma_{X}^2+\sigma_{Y}^2 + 2\times \color{red}{\frac{1}{n} \sum (X-\mu_{X})(Y-\mu_{Y})} \end{eqnarray}$$

この赤色の項こそ共分散の正体です。分散の定義式から導かれるものですね。
つまり、合計の分散 = Xの分散+ Yの分散 + 2\(\times \)共分散
となるわけです。

共分散項が何を意味しているか考えてみましょう。

共分散項の意味

平面を\( x=\mu_{X}, y=\mu_{Y} \)で4つのグループに分けると、右上と左下にデータが多い場合、つまりX, Yが同傾向の場合、共分散項は正になり、左上と右下にデータが多い場合、つまり反対の傾向の場合は負になります。また、X,Yがランダムに散らばっていた場合は共分散は0に近くなります。


つまり共分散の意味するところは二つのデータの傾向になります。

したがって二つのデータ群の傾向から\( \sigma_{X+Y} \) の値を調整する、これが共分散項の役割ですね。
データが同傾向であれば共分散>0になるので分散は大きくなり、データが反対傾向であれば共分散<0となり分散は小さくなります。
もし、無関係であれば共分散=0となり、分散はXとYの分散の単純な足しあわせになります。

今回挙げた株価の例では、共分散は-125となります。
確かにXとYの株価の値動きは反対方向ですよね。

よって、
合計(X+Y)の分散=125+725 + 2 \(\times \) (-125) = 600

となり、最初に算出した分散と一致してますね。

なんだかスッキリした気分です。

相関係数については次回書きたいと思います。